ナムと幼稚園児

脚本家の微笑み返し

 

6歳の娘は、初めて父親が脚本演出を担当した芝居を観ることとなった。いや、以前にも観ていたのだけど、内容がわからないので途中で飽きてしまってどっか行っちゃったらしいのだ。「トウタンの劇、見るの楽しみ!」と今回は期待も大きかった。幼稚園のオトモダチのみなさんにも宣伝してくれて涙ぐましい父娘愛であるのだけど。今回の「ナム!」という芝居、6歳の子どもらに理解できる筋ではない。しかも2時間15分休憩なし。子どもの耐えられる長さじゃない。ところが、オトモダチのみなさんの期待も膨らんでしまって、何人か観に来てくれたのだ。オトモダチのお母さん方、申し訳ありませんでした。
そしてやはり、終演後、多くのお客さんから好評の声をいただいて舞い上がっている父親のかたわらに寂しそうな娘がいた。娘はポツリと呟く。「トウタンはどうして、子どもたちにわかる劇をかかないの?」
その後、娘は「どうしておばあちゃんは幽霊になったの?」「どうして黒い着物を着た女の人に男の人が謝っていたの?」などなど母親を質問責めにして、ほぼ一ヶ月かかってようやく筋を理解したようだ。救われたのは、わが劇団のオリジナル曲は耳障りがよくて、いつも子どもが覚えてくれる。幼稚園でちょっと流行ったらしい。冒頭で歌われる「ばあさんの葬式」という歌。「しんだーしんだーばあさんの葬式」と連呼する歌なのだけど、一時さぞ不思議な幼稚園であったろう。先生方ごめんなさい。

劇団いぶき

劇団いぶきは、鹿児島県知覧町で40年以上活動している劇団です。