読書好き嫌い2

脚本家の微笑み返し

 

 娘の通う小学校は、全校児童50人という小規模校。その子どもたちの前で読書についてアリガタイ話をしなければならなかった。しかも5分間で。携帯電話のタイマーでバイブをセットしておいたのだが、まだ前段(ツカミ)も話し終わらないうちにポケットでブーブーうなっている。おい、まだアリガタイ話に入っていないんだぞ。と、思う間もなく、私のツカミでツカまらない子どもらが、眠そうな目を向けている。そろそろ先生たちが、次の授業時間の心配をはじめるのではないかと、先生たちに目がいってしまう。あっケッコウ冷ややかな視線。だいたい先生たちの方が圧倒的に読書量は多いだろうし、読書に関する一家言もお持ちだろうし、話もうまい筈なのだ。この私をどんなふうに見ているのだろう…と思っているうちにすでに2分超過してしまった。その間も口はいいかげんなことを喋っている。しかし、子どもたちの反応は薄い。なんとか、あと3分で話をまとめよう。もうウケなくっていい。はやくこの場を立ち去りたい。と思いながら、口からでまかせに今喋っていることをどうやってまとめればいいのだ。まとまらない。しかし、ウルトラマンだって毎回3分で怪獣を倒していたではないか。あの脚本家や演出家は毎週、3分限定の戦闘シーンを考えてこなしていたんだなあ…感動…、ばか、ウルトラマンのことなんか考えている場合じゃない。子どもの前だからウルトラマンのことを考えたのか…そんなことはどうだっていい!はやくまとめろ!次の授業が始まってしまうぞ。もうまとめなくてもいい!終わりのあいさつをしろ!そうだ終わった。何分超過したんだ?いいやもうどうでも。いったい何しに来たんだろう。みんな、どうか、こんな表現力のない大人になりませんように、本をたくさん読みましょう。

劇団いぶき

劇団いぶきは、鹿児島県知覧町で40年以上活動している劇団です。