テレビ中毒症例

脚本家の微笑み返し

 

 昔、テレビからは頭が悪くなる電波が出ていると聞いたことがあるが本当だった。

 娘の通う小学校の子どもたちはテレビゲームをよくやっているらしい。子どもたちの前頭葉が心配だ。

 我が家は、妻と子供二人の4人家族である。上の娘がまだ小学1年生なので、テレビゲームはやらない。(というか機械そのものがない。私も興味がないし、子どももまだ欲しがる年齢ではないのだろう)しかし、テレビは見る。我が家で一番テレビの視聴時間が長いのは私である。子どもの頃からだらだらと長時間見るクセがついてしまっていて、これは一種の中毒と思われる。かといってひとつの番組に集中することは少ない。ドラマは好きだけど、最近ちゃんと見たのは「Drコトー」くらいで、他はCMの度にチャンネルを切り替えるため断片しか知らない。何を見たいというあても無くリモコンを握って、バシャバシャ切り替え続けている姿は、客観的に想像するとおぞましい。明らかに異常だ。

 治療しなければならない。で、娘がいる時間は極力テレビをつけないことにした。娘も今は「ドラえもん」と「あたしんち」(ドラえもんの後にあるので気になるらしい)と「動物奇想天外」と「伊藤家の食卓」以外の番組にはあまり固執していないようだ。「テレビをつけないと時間がゆっくりになるね。」と娘は超物理学的なことを言う。事実、夕食から子どもたちの寝るまでの時間は、おだやかで、団欒という言葉がよく似合う。一見、治療は順調に推移している。手の震えや吐き気、幻覚などもない。

 しかし、夜中に気がつくとテレビの前で倒れていることがあるのだ。決まって時計は2時。テレビは砂嵐。私は恐怖のあまりつい、チャンネルを夜中でもやっているBSに合わせてしまう。これはもはや某国の陰謀以外のなにものでもない。私はただ、ニュースステーションを見ようとしていただけなのに、途中で記憶をなくしているのだから。

劇団いぶき

劇団いぶきは、鹿児島県知覧町で40年以上活動している劇団です。