笑わせる

脚本家の微笑み返し

 

 泣かせるホンと笑わせるホン、書くのにどちらが難しいかといえば、それは笑わせるホンだと思っている。だいたい私はネクラだから、「笑わせる」ということに関してはいつもとても悩んでいる。この一連のコラムだってぜんぜん面白くないじゃないか。そこいくと当Webの種子島支局長のコラムなんざ、文面に明るさがにじみ出ていて、ゲロを吐こうが腹をこわそうが、ついつい頬が緩んでしまうというものだ。(しかしくれぐれもご自愛のほどを…)それに引き換え私のコラムは、どこか胡散臭く、15歳から引きこもって以来40を超えてなお恋愛シュミレーションゲームのキャラクターにファンレターを送っている中年男が初めて普通の女に恋をして書いたストーカーまがいのラブレターみたいに暗いとお思いの方もおられるに違いないのだ。失敬な!私とて妻も子もいてまっとうにお天とう様の下を歩いている小市民だと、今こそ声を大にして言ってやる!

 そんなお茶目な私であるが、先般「東京ボードビルショウ」の「その場しのぎの男たち」を観劇し、「笑わせる」ということに関して目からウロコが落ちるようにそのメカニズムを得心したということを今回書いてみたい。但し、目からウロコが落ちるのはいいが目からコンタクトレンズが落ちるとかえって見えなくなってしまうのでご注意あれ。

 「その場しのぎの男たち」は三谷幸喜氏の作品である。三谷氏といえば最近は「新撰組!」という歴史コントをNHKに提供し毎週放送させている。私も楽しく視聴しているが、あのコメディー作家としてのセンスのよさには舌を巻く。「ラッシャイ!」というすし屋のおやじのマネが得意になったほどだ。

 「その場しのぎの男たち」は、実際に起こった「大津事件」をめぐって伊藤博文や陸奥宗光などの歴史上の人物たちが繰り広げるコメディーである。史実や鹿爪らしい偉人も、デフォルメすればこんなに可笑しくなる…というお手本のような芝居だった。所詮人間は可笑しい存在だ。毎週月曜日にアイスホッケーをなさっているあのプライド高き人だって、トイレのあとにキレが悪くてズボンを直径10cmくらい濡らすことだってたまにはあるに決まっている。「そうなんだ。人間って可笑しいってことをみんな知っているから、可笑しい話が可笑しいんだな」と、やっと分かった私なのだった。

 そこで、私は私の周りの人々の可笑しいところを研究することにした。私の周りの人よ、ぜひあなたの可笑しいところを私の前で思いっきり表現していただきたい。

劇団いぶき

劇団いぶきは、鹿児島県知覧町で40年以上活動している劇団です。