コラムのご感想はBBSへ

脚本家の微笑み返し

 

 私は以前、このコラムで「共に掘り下げたいテーマがあったらmailしてね」と書いたことがあるが、いっこうにmailはこない。待てど暮らせどだ。もう待てない。だからもう待ってなんかやらないのだ。
 だいたい、私がどんなにこのコラムで真摯に事を論じても、私に対して共感のお便りとか、美辞麗句を満載したmailだとか、花束だとか現金だとか、送ってきたためしがないのだ。何の反応もないのに書き続けるとうのは寂しい作業だ。

 かつて私はとても寂しかった。発表するあてもない戯曲をこつこつと書いていた頃がある。いたいけな十代の頃だ。発表しない戯曲というのは、実際面白いのかつまらないのか全然わからない。だからト書きに「ここで客が大爆笑、しばらく笑いが絶えない…」などと書かねばならなかった。さらには「3列目の通路側に座っている客が笑いすぎて入れ歯が2列目の客の頭に飛んでしまうが、2列目の客も笑いすぎて尋常ではなく、頭の入れ歯を自分の入れ歯と勘違いして口に入れてしまう、それを見てしまった隣りの妊婦が驚いて産気づく」などと、今の劇団いぶきの公演でしばしば起こるようなことも、想像で書かねばならなかった。あの頃は本当に寂しかった。

 私は幸運にも、私の脚本を演じてくれる仲間たちにめぐり合い、寂しさから脱却することができた。もし劇団いぶきに出会わなかったら、私はその寂しさをバネにプロの脚本家になり、大劇団の大プロデューサーに認められ、大劇場で自分の脚本の演出を任されるが、主演女優と恋に落ちてしまい、仕事をとるの私をとるのと女優に迫られ、マスコミの目を逃れて二人でニューヨークに逃亡し、ブロードウエイで成功を夢見るが敢え無く挫折、結局女優にも愛想をつかされて、今ごろスラムで安いウイスキーを煽りながら、トランペットを吹いている毎日だったろう。だから、劇団いぶきの仲間たちにはいつも本当に感謝しているのだ。

 しかし、このコラムを書いている私はとても寂しい。だいたい何人が読むのだろう。このwebにはアクセスカウンターがないのでアクセス数すら分からない。実は誰も読んでないのではないか。誰も読まないのにこんなお茶目なことを書いているなんて恥ずかしい。寂しくてさらに恥ずかしいなんて、もはや立ち直れない。

 だから、コラムを読んだ人がBBSで反応してくれると私はとても嬉しい。ぜひ今後ともコラムの感想をBBSに書き込んでいただきたい。「面白かったわ」とか「なんて素敵なご容姿を彷彿とさせる文章でしょう、お姿を見たいので写真を送ってください」だとか「ただで読むのはもったいないのであなたの預金口座に五十万円振り込みたいのですが」とかなんでもいいのでBBSに書き込んで欲しいものだ。

劇団いぶき

劇団いぶきは、鹿児島県知覧町で40年以上活動している劇団です。