そんなつもりでは…。

脚本家の微笑み返し

 

 マスメディアとは、不特定多数の人に大量の情報を伝達する媒体のことだ。新聞やテレビ、映画。しかし私たち個人も今日、不特定多数の人に少量の情報を伝達する術を手に入れた。ホームページと言うヤツだ。

 かつては、個人が社会に物申そうと思っても、それには膨大な労力を要した。それが、今ではホームページに掲載することによって、簡単に物申せるようになった。まあ、不特定少数の人しか見ない当方サイトでも、とりあえずは世界中の誰でも見られる状態になっているのだから、世間に物申すことが可能なメディアではある。

 私はこのサイトのコラムを執筆する際、「お前みたいなモンが思い上がるんじゃねえぞ」と内なる自分に毒づいている。評論家にでもなったつもりで、作家にでもなったつもりで書くのはいい。その方が楽しいモンね。だがこの「つもり」ということはわきまえておくべきであろう。この「脚本家の微笑返し」のすべてのコラムは、評論家にでもなったつもりの私や、作家にでもなったつもりの私や、宇宙人にでもなったつもりの私が書いている。だから、あなたもそのつもりで読んでもらいたい。お遊びだってことを理解したうえで読んでいただきたいのだ。だから、美辞麗句満載の好評メールや現金は送ってもらって一向に差し支えないが、苦言や反論、宇宙人に関する問い合わせは困るのだ。

 不特定多数の人に大量の情報を発信できる本物の評論家や作家は、それ相応の努力をし、社会の評価を浴びたうえで情報を発信する術を手に入れた方々だ。
 私たち「劇団いぶき」は、芝居というひとつの情報を、限られたエリアで発信する術を手に入れることができた。それは、劇団発足以来、芝居をつくるという作業を通して地域の方々の評価を浴びてきたからであって、私たちを「劇団」にしてくださった地域の方々に感謝しなければならない。私が金持ちだったらポンと1千万円くらい町に寄付して感謝の意を表したいほどだ。金持ちでないことが残念でならない。

 私はいろいろなサイトを見ながら思う。みんな「つもり」をわきまえているのだろうかと。もちろん中田英寿のホームページは中田にでもなったつもりの中田が書いているのではないので、そんな中田英寿は別として、多くの人が、ホームページ上でいとも簡単に社会に物申している。人を批評している。体制を批判している。つい十年くらい前は、ホームページを作るには、HTMLタグを書かなければならなかったし、ある程度苦労して試行錯誤の末にUPしたものだが、今はホントにお手軽に誰でも作れるようになってしまった。それをまたたくさんの人が読んで、頷いたり、反論したり、議論したりすると思うと、なんだか背筋が寒くなる。最近とても強く思うのだ。「あまりに安易に社会に物申してはいけない」と! が、こんなことを物申している私は、今何になったつもりだ?

劇団いぶき

劇団いぶきは、鹿児島県知覧町で40年以上活動している劇団です。