方言

脚本家の微笑み返し

 

「ナム!」再演では、前回とキャストが替わる。前回、種子島支部長が演じたユキノという役を、昨年入団した劇団員が演じることになっている。種子島支部長はこのたび出産し、先般かわいらしい写メールが送ってきた。健やかな成長を願わずにはいられない。また支部長におかれては、子育てのかたわら折をみて支部活動にも励まれよ。コラムのタイトルを「種子島支部長の育児日記」としてもよかろう。

さて、種子島支部長の演じていた役を、新加入のMさんが演じることになった。私たちの芝居は、地域に題材を求めるものがほとんどなので、セリフも方言だ。で、Mさんは今、知覧弁と挌闘している。彼女は知覧出身ではないのだが芝居の演出上、同じ方言でも知覧弁で喋らなければならないのだ。

方言とはおもしろいものだ。鹿児島弁といっても、県内各地さまざまだ。知覧町内ですら微妙に違う。町内の南部方面出身の役者と北部方面出身の役者が親子を演じるとき、イントネーションなどを厳密に考えるとあり得ない会話だったりするのだが、客は許してくれている。しかし、ツッ込まれても心配には及ばない。

実はね、ココだけの話なんだけど、あの親子はワケありなんですよ。あの子の母親っていうのはあの親父の後妻でね。あの息子は連れ子だったわけ、それでもあの親父は息子のことをああまで親身に思っているんだからねえ。それはあの親父自身の生い立ちと関係しているのだけど、あのばあさんも親父とちょっと言葉が違いましょう?あのばあさんのダンナが、トンだ浮気モンで、女を囲ったんですがね、その女が胸の病で亡くなりまして、ダンナと女の間にできた子をダンナが引き取ってね、ばあさんも、不憫に思ってわが子のように育ってたってんですからねえ…。あ、これほんと、ココだけの話ですからね。たのみますよヘヘヘヘ。

というわけで、芝居はさらに深みを増して、感動も倍になろうというものだ。

劇団いぶき

劇団いぶきは、鹿児島県知覧町で40年以上活動している劇団です。