久しぶりのコラム「市民劇団?」

脚本家の微笑み返し

 

 鹿児島県演劇見本市と銘打った県内劇団の交流会が催された。我ら「劇団いぶき」も参加させていただいた。まわりは二十代、三十代を中心に活動している劇団だ。「若さがまぶしい!み、みないで、おじさんをそれ以上見つめないで!」と、私は終始頬を紅潮させもじもじしている不気味なおやじであった。

 劇団ごとに15分ずつを与えられて、それぞれがすばらしいパフォーマンスを見せた。我らは、劇団創立32年の歴史を15分の映像に編集してして流した。dbuの1週間のがんばりと、ニシヤンのナレーションで、ああした場で見ていただいても恥ずかしくない映像ができたと思うが、やはり他の劇団のナマのパフォーマンスに圧倒されてしまった。LED CHAPLIN市原氏の不思議で心奪われる空間の作り方、演劇ユニット「ノバの刺身」の着想、劇団上町クローズライン宇都氏の情熱、鹿児島高校演劇部の瑞々しさ、そして劇団「鳴かず飛ばず」のみごとな演劇力(←ココ演技力の誤字ではない、あえて演劇力)。鹿児島の演劇界は面白いことになってきたぞ!

 私がここで芝居づくりを二十数年やっている間にも、特に鹿児島市内には様々な劇団が現れてはいつしか消えて行った。いきさつは知らねど。面白い劇団もたくさんあった。最も強烈に覚えているのは80年代だったと思うが、「芝居組WAZZE」という劇団が、出来たばかりの鹿児島市立美術館の玄関前で、あの建物を背景に芝居をしたり、桜島の水族館跡地にかがり火を焚いて、気球を上げて、役者は腰まで海水に浸かったりしながら芝居をやっていた。あの過激で面白い集団はどこへ行ったのだろう。もっと見たかった。

 かように、私は鹿児島市内の演劇シーンにも注目していた。そして最近、高校や大学の演劇部出身者や県外で芝居をやってた方が、次々と面白い劇団を旗揚げして、その若い彼らが中心となって鹿児島演劇協議会が立ち上がったのだ。我らが劇団いぶきも、この協議会にまぜていただいている。

 ぜひ、鹿児島市内の若い劇団には、協力しながら競い合い、超人気劇団となってもらいたい。コアな芝居好きだけでなく、若い客をたくさんたくさんかき集めるアイドル劇団があってもいい。鹿児島市の演劇が盛り上がって、そして地方でがんばっている劇団と手を組むことで県内全体の芝居づくりが変わって行くと思う。

 ところで、「劇団いぶき」をパンフレットのプロフィールで「市民劇団」と紹介したこともあって、懇親会で「市民劇団って何?」と聞かれた。「いやいやいや×10…」と解説するのに困難を極めた。出自の青年団から切り離したことを表すために、「青年団演劇部」と「市民劇団」とに区別しただけで他意はなかったのだが、他意を感じさせる言い方なのかも知れない。市からがっぽり助成金をもらっているとか、天下りを受け入れているとか、天下り役人が主役を奪うとか、キャストは神楽坂のの高級料亭で決めるとか、幕府の隠密がいるとか、実は助さんだったとか、由美かおるが風呂に入るとか、かつお兄さんが植木鉢を割ったとか、もろもろの誤解を解くのも大変なので、これからは、フツーに「劇団」と言うことに努めよう。

 今回、3月の市文の公演も紹介して、他の劇団のみんさんも観にきてくださるみたいなので、これも困ったぞ!みんながんばれ!
 映像づくりでいいナレーションを入れてくれたニシヤンを、あの真面目なニシヤンを舞台の上でどう壊すかがもっかのところ楽しみであり、今私が早々にやらなければならないことだ。ニシヤン、私と一緒に壊れよう!

劇団いぶき

劇団いぶきは、鹿児島県知覧町で40年以上活動している劇団です。