終わった感覚がない。2011年

脚本家の微笑み返し

 

 終わった感覚がないというのは、結構つらいことかも知れない。

 歳をとると、トイレの度にそう思うよ。

 今回の演劇見本市出演作品「新作公演に関するいくつかのこと。」は、完結しない芝居だった。果たしてあれでよかったのかどうか分からない。

 劇団いぶきの芝居は、私が書くことになっている。私の場合、8割方アテ書きだ。少しの時間でも稽古に来る人は、みんな板に乗せたい。我らが劇団は平均年齢が高い。年齢を重ねるごとに家庭も職場も、負担が重くなる。そんな中をやりくりしてでも芝居したい人、あるいは我らが劇団を愛している人を板に乗せてやりたい。そうしてきたから34年もやってこれたのだ。

 脚本も、演出も、役者も、音楽も、ダンスも、ことさら技術が高い訳ではない。足りないところをみんなで補いあって、少しでもいいものをつくろうとしてきた。そうやってつくった芝居を。知覧の人たちは「いいね!」って言ってくれた。「ぜひやってくれ!」と言ってくれた。

 そして今回、知覧でやる2時間の芝居が元にあって、そこから切り出した予告編を創作した。「あとは観てのお楽しみ」ということにしよう。けれど、音楽やダンスなど、劇団いぶきの特徴は出そう。そう考えていたらああいう芝居になった。

 完結しないストーリーは気持ちが悪い。やる方も観る方も終わった感覚がない。アノときのアレみたいだ。と、歳をとると思う。それが狙いだったのだから仕方ないが、ズボンは汚さずに済んだのかも知れない。

劇団いぶき

劇団いぶきは、鹿児島県知覧町で40年以上活動している劇団です。