ADSL開通によせて

脚本家の微笑み返し

 

最近わが家にもADSLがやってきた。これで田舎暮らしでも不自由のない生活が営めるというものだ。地元商店街には申し訳ないが、昨年はDVDレコーダーをネットで買った。書籍類はいつもネット書店で買っている。ただし、ダイヤルアップだとゆっくり品定めする時間がもったいないし、電話代のコストを考えると得しているのか損しているのかわからないところがあったが、そんな心配もADSLの開通で解消された。

 これから、辺鄙な田舎はどんどん辺鄙になっていくと思われる。国の政策なども都会主導型に変わりつつあり、利益誘導型の代議士などはメディアに叩かれるし、地方への補助金や交付金も減額の一途をたどるだろう。

 だからといって、生活が不便になるかも知れないという実感がわかないのはなぜだろう。田舎といったって、家の前まで舗装された道路は、日本中にはりめぐらされた道路ネットの一部なのだ。インターネットで注文したDVDレコーダーは、宅急便のお兄ちゃんが道路ネットを使ってちゃんと届けてくれる。

 もしいつか、地域の産業も廃れ、住人も激減し、私の収入も減り、故にADSLなどの通信費も払えなくなり、家の前の道路も荒れ放題となったとき、”ああなんたる不便だ”と叫ぶかもしれないが、ここに居住することを選んだ以上、受け入れざるを得まい。今はそんなふうに思えるのは、そんなことが起こるという実感がわかないからだ。私とは、安穏な環境に馴染みやすく、事態に直面してしか学べない愚かな人間だ。

 と、今回はADSLの開通を記念して自らを分析してみました。

劇団いぶき

劇団いぶきは、鹿児島県知覧町で40年以上活動している劇団です。