8年前に購入し、だましだまし使っていたMacのシステムが壊れてしまって、その復旧の過程でいろいろなデータ-を失ってしまった。私生活も芝居もPCも、なんだか頭の中でごちゃごちゃと整理がつかなくて、コラムのテーマも浮かんでこない。
で、ここ2週間ばかし、読書にふけっていた。そこで今回は読んだ本の紹介。(ネタばれありますので、まだ読んでない方はご注意あれ)
私はひねくれているのでベストセラーはあまり読まないのだが、最近話題の本にとりかかってみたので、そのレポート。
1.さおだけ屋はなぜ潰れないのか(山田慎哉 光文社新書)★★★☆☆
数字を見るセンスを磨けば、世の中のいろいろなものが見えてくるのだなあと納得。数字を見るセンスと計算力とは別だというのが嬉しいし、冒頭で、「会計は難しい!」と言いきってしまっているところも好感が持てた。仕事で複式簿記を理解しなければならず、「わかりやすい簿記」なんて本を行きつ戻りつ時間をかけて読みながら「俺ってバカじゃないの?」と悲観していたのだが、ちょっとだけほっとする本だった。でついでに同著者の「世界一感動する会計の本です」(日本実業出版社)も読んでしまった。まあ、こっちの方は特に感想はありません。
2.四日間の奇蹟(朝倉卓弥 宝島社文庫)★★★☆☆
最近映画になって、映画の方はあまりヒットしなかったらしい。映画は観てないけど…うーん、この登場人物の心情の表現が芝居や映像でうまくできるかってことだ。私のような凡人は、これを芝居にしろと言われても「できせーん」と言うしかない。筋とかエピソードとかの目新しさはなくて、設定としては「ナム!」と似ているのかも知れない。
小説がベストセラーになったのは、筋の斬新さではなく、登場人物の苦しみ、哀しみ、妬み、喜び、祈り、それらのうつろいが丁寧に描かれて、そこに引きこまれるせいだと思う。詳しくは書かないけれど、”少女が赤ん坊を見つめる場面”などでは行間にも彼女の心が滲んでいるようでした。
ただし、広告の「ラストで号泣しました~」みたいな読者の声は、うーん、ちょっと違う気がする。いや、号泣したかったらしてもいいのだけど、「泣ける話!」みたいな言い方をされると、なんだかそれだけみたいで自分の読み方に自信が持てなくなる。で、マンガにもなるらしい。読みたくはない。
3.半島を出よ 上下(村上龍 幻冬舎)★★★★☆
北朝鮮の軍隊に福岡市を制圧されるというこわい話。
私たちの帰属する国とは何なんだろう。私たちは様々な場面で、マジョリティーであり、ときにマイノリティーになる。地域の消防団は「町民の生命財産を守る」と言う。警察官は「県民の生命財産を守る」と、自衛官は「国民の…」しかしそれは、全体の奉仕者であって一部の奉仕者でないことを大前提としている。私は一人ひとりの命を大切にする社会であって欲しいと思うが、マイノリティーを切り捨てなければ、大多数を守れないとなったとき、そして、自分がその切り捨てられるべき少数派に属してしまっていたとき、…私には潔く多数派の犠牲になるなんてできそうもないし、逆に切り捨てることを決断しなければならない立場だったら、やっぱり誰かに責任を押し付けたり、その場しのぎの場当たり的な解決を図ろうとするかもしれない。
まあ、そんなことに悩まなくても、この小説は、近未来荒唐無稽小説として面白かった。ただ、殺人の場面などは、著者特有のキワドイ表現で、中学生以下にはお勧めできません。
4.ついでに
電車男 (中野独人) ★☆☆☆☆
1月頃、本屋で立ち読みしてたら急にdbuに話しかけられて、吹いてしまって、本に唾液がついちゃったんだよね。で買わなきゃいけないはめになり、買いました。
「もちつけ」だの「萌えー」だの言葉が面白かったけど、2chの隠語みたいなのだと後でわかってなーんだって感じかな。面白かったけど、買って読むほどじゃなかったかな。後でネットでタダで読めると知って、ソンしたって思いました。正直。…うーん、この世にこんな本や表現があってもいいんじゃない。
今回は、「話題の本」というテーマでおおくりしました。「話題のナントカ」でしばらくいくかな?