だめだめスパイラル

脚本家の微笑み返し

 

 代表以下5人のメンバーで緊急企画会議を行った。新作にして30周年記念公演作品のテーマやおおよそのあらすじを決めた。

 大きなテーマは「老いと命」。なんだか「ナム!」みたいだな。しかし「ナム!」からずっと考えていたことをもう一度やってみるのも悪くない。観た方に「ナムみたいだった」と言われる前に言っておこう。タイトルもストーリーも違うけど、「ナム part2」みたいな作品です。あるいは、今までの芝居をみんな重ねたような芝居にしたいと思っている。30周年記念だし。

 もう、構成の大枠もできて、こまかな「笑い」の仕掛けも企画会議で焼酎片手にゲラゲラ笑いながら話し合われた。後は、テーマに沿った取材をして、より具体的な筋立てをつくっていく。やることははっきりしている。

 さまざまなアイデアが頭の中で渦巻いている状態なのだけど、なんだかテンションがあがらないんだよね。「舞台脚本講座」(↓注))がトラウマになったか?

 最近、ダメダメなことが続いている。それがすべて、自分の人格や人間性の足りなさ、知性と教養のなさを起因としていると自覚するにつけ、この「だめだめスパイラル」から抜け出せない。

 「だめだめスパイラル」とは例えて言えば、書類に不注意でコーヒーの雫が少しだけ落ちて、ほっといてもバレないかなと思いつつ「これじゃダメダメだ」と、スパイラルから抜け出すために、砂消しゴムで擦ると消しゴムの汚れで更に書類を汚し、「もっとダメダメじゃん」と凹んで、「今後コーヒーには気をつけよう」とコーヒを書類の傍から離して机の端に置いといたのを忘れて仕事をするうちに、肘がコーヒーカップを押して…。

 今そんな「ベタドラマ」のダメ社員みたいな「だめだめスパイラル」の真っ只中。ここから抜け出すために山に篭り修行をすれば遭難して崖から転落しそうだし、神社仏閣に行けば悪霊に祟られそうだし、根性をたたきなおそうと自衛隊に体験入隊すれば実弾にあたりそうだし、リラックスしようと温泉に行けば露天風呂の濡れた石に足を滑らせて転倒し、頭を打った拍子に記憶喪失になって、介抱してくれた美人女将と恋におちて、手に手をとって津軽海峡を越えて、オホーツク海を眺める北の港町で小さな居酒屋を営みそうだし、抜け出せそうな気配がない。

 そこで気づく、抜け出そうなんて思うから抜け出せないんだ。なーんだそうだったのか。もっとはやく気づけばよかったな。

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(注)コラム「舞台脚本講座(宝山ホール)」は削除しました。自虐ネタを大袈裟に書きすぎたような気がします。

劇団いぶき

劇団いぶきは、鹿児島県知覧町で40年以上活動している劇団です。