「やまびこきつね」浮辺小学校公演を岡部耕大さんが観に来てくださっていた。岡部さんはこの6月、紀伊国屋ホールでの新作公演の一仕事を終えて、来鹿されていたらしい。
岡部さんとは、わが劇団代表が縁あって数年前から親しくさせていただいているようだが、私は、知覧での拠点とされている奥様の実家に二度ほどお邪魔して、お茶や焼酎を飲ませていただいた。
また、わが劇団代表は、某茅葺古民家を地域おこしや青少年教育などに活用するグループにも属していて、岡部さんもこの事業に賛同され、来町の度にこの古民家の囲炉裏を囲むことになっているようだが、その場にも二度ほど居合わせていっしょに飲ませていただいた。(そうだった…この古民家の名前、「矢櫃庵(やびつあん)」の名付け親は岡部さんだった。)
その矢櫃庵での飲み会で、私は何故か岡部さんに激しく怒られた。きっとなにか生意気なように見られたのだろう。「おい!お前!どうなんだ!お前!」と言われて、つい「お前って言われても…」と口ごたえもした。なにを怒られているのかもわからないままに酔っ払って、最後は握手していた。私にしてみれば理不尽な怒られ様にも、決定的に腹が立たなかったのは、「田舎の素人劇団を見下していないからこんなに怒るのだろうな」と、なんとなくそう思えたからかも知れない。岸田戯曲賞の選考委員までされていた61歳の大劇作家が、田舎のド素人劇団の脚本担当者を、唾を飛ばしながら怒っている図は、俯瞰して眺めると滑稽で、しかしながら温かい。だからといってもうコリゴリだけど。
そんな岡部耕大さんが「やまびこきつね」を観て、わが劇団代表に「よくつくってある。自信持ってやりなさい」とおっしゃったそうだ。また「じいちゃんの日記帳」の台本も読んでくださって「なかなか力作。仕上がりが楽しみだ」ともおっしゃったそうだ。もちろん「素人にしては…」という冠がつくのだろうけど、プロ中のプロに、「お前らのやってることも悪くない」と言っていただいて、ちょっと力がわきました。