また、やってしまった。2年前、この大会の審査員を引き受けて、2校から1校を選ぶという苦しい状況に閉口して、もう絶対こういうのは引き受けないと誓ったのに、今度は知覧町民会館が会場ということもあり、断る勇気を出せなかった。そのことをとても後悔している。
今回も、2校の演劇部が参加した。2校ってのはねえ…。それをまた2名の審査員で「じゃあ、こっちにしましょう」と決めなければいけないのだ。心が痛む。痛みすぎる。
僕らも青年団時代、コンクールに参加して、自信満々の作品が選考されなかったときの悔しさは味わったことがある。僕らはまあいい。高校生だ。高校生は3回しかチャンスがないのだ。3年生には「これが最後…」という思い入れもあるだろう。ああ…なんて残酷なんだ。
2校の作品は実に対照的な作品だった。今回は事前に脚本を読んだ段階で困ってしまっていた。1校はテーマがしっかり出ていてわかりやすい。高校生が演じるにふさわしいし、たぶん観ればとても好感がもてるだろう。もう1校は、大人の小劇団がやるような芝居だ。凝った長セリフを連ねてゆく。大きな展開はないかわりに、セリフや状況設定を、脚本家の意図に近づけることができれば、かなりかっこいい芝居になるだろう。でも、高校生ができるのかこれ?
で、実際に観ると、どっちも面白くて、終わったら逃げ出したくなった。「決められないよ!」
もうひとりの先生と、「どうぞ」「いえ、どうぞ、どちらがいいですか?」「いや先生はどちらが?」とへんな問答を挟みながら、2校の芝居について話し合う。辛いなー!
芝居には正解はない。結局、「もうちょっとこうしたらもっとよくなるんじゃないか」という意見がより多く出た方が選考された。両校とももう一回観たいけど、数週間したらまったく違うものが観れるかも知れないという期待感が選考動機となったかも知れない。芝居は比べるものではないけど、僕の好みで、両作品の好きなところと残念なところを差し引きして無理矢理比べると、今は甲乙つけられないのだから仕方がない。しかしそれは、結局、審査員の好みなんじゃないか!
だから、残念ながら選に漏れた方の演劇部員のみなさん!おもいっきり僕の悪口を言ってください。「なにあの黄色のTシャツ着たヤツ、講評もボソボソ訳のわかんないこと言って、ぜんぜんズレてるし、あんなセンスのないのがどうして審査員なの!あの黄色Tシャツ野郎がいけないのよ!あの黄色Tシャツのメタボ野郎の言うことなんか信じない!あの黄色Tシャツのメタボ鼻毛オヤジ野郎なんか審査員なんて認めない!」と声を大にして叫んで、僕を怨んでくれたらいい。…僕も、かつてそうしたから…。そして、自分の作品に自信と誇りを持ってください。この作品はあなたたちの一生の宝物です。