がんばれ!「劇団ふるさときゃらばん」

脚本家の微笑み返し

 

 まずは、「ナム!」の市民大学講座公演がまずまずの出来栄えでホッとしました。南九州市教育委員会様をはじめ多くの皆様のお力添えに心から感謝です。

 さて、本日2010年2月27日、「劇団ふるさときゃらばん」の破産のニュースが報道されました。驚いて、きゃらばんの公式サイトを見ようと検索するのですが、破産のニュースしか検索されません。

 私たち劇団いぶきが、かつて知覧町連合青年団の演劇部だった1980年代に「劇団ふるさときゃらばん」は私たちに大きな影響を与えてくれました。劇団ふるさときゃらばんが1988年から92年にかけて全国47都道府県公演を達成した「ムラは3・3・7拍子」の初日公演は、私たち知覧町連合青年団が主催したのです。この私が、東京都小金井市の劇団事務所を訪ねて初日公演の誘致をとりつけたのです。

 私は初日を主催するための熱意を示すために、二日間公演で1500人以上の観客動員を約束しました。当時人口1万5千人弱の小さな町で、人口の1割以上の人に2500円のチケットを売ることを約束したのです。当時は無謀ともなんとも思いませんでした。

 このときの青年団長は、現劇団いぶきの宮原代表でした。彼も私の提案を受け入れて、反対する青年団員を説き伏せてくれました。団長の心意気と、事業が赤字になったら私が買ったばかりの車を売るという決意表明を皮切りに、「町民1500人にチケットを売りつける作戦」は展開され、60人の青年団員が、職場では同僚や上司に、夜になれば見知らぬ人の家にも押しかけてチケットを売りまくりました。この若者の動きに、町の婦人会や文化協会の大人たちも動かされ、1700枚のチケットが売り上げられたのでした。それは小さな町に起きた大きなうねりのようにも感じられました。

 人にモノを売るのは難しいです。しかも、まだ誰も見ていない、まだ出来上がっていない作品のチケットを売りつけるのです。しかし私には確信がありました。「劇団ふるさときゃらばんの新作は、絶対にいい。しぶしぶチケットを買った人も、観た後は売りつけた青年団員に感謝すらしてくれる筈」と。その根拠は、この前作、「ザ・結婚」の面白さと、なんと言っても劇団制作部の仕事に対する姿勢や熱意でした。

 そして、私の確信はそのとおりになりました。

 私は、「ムラは3・3・7拍子」が、劇団ふるさときゃらばんの作品の中で一番好きです。そして、この頃の劇団ふるさときゃらばんの雰囲気がとても好きです。しかし、それを支える青年団のような組織は、全国的に衰退の一途をたどりました。私たちの演劇部も青年団では持ちこたえられず、青年団から切り離して活動を始めました。劇団ふるさときゃらばんも、好景気の頃は企業に支えられたりしながら、様々な工夫をして、各地にミュージカルを届ける活動を続けてきて、悩みながら、苦しみながら今日を迎えたのでしょう。

 劇団ふるさときゃらばんの通称「下座」と言われる舞台脇に演奏者がいるスタイルは、現在の劇団いぶきの音楽班のスタイルが確立されるのに大きな影響を与えています。また、あのとき劇団ふるさときゃらばんのミュージカルが発していたテーマは、私に「誰に芝居を観せるのか」という観客の存在を意識するきっかけを与えてくれました。

 そして、なにより、ふるさときゃらばんの劇団員が劇団の方向性を信じて、真っ直ぐに仕事をする姿に感動していました。

 劇団ふるさときゃらばんをたて直すためにこれから奮闘される皆さん、そして新たな別の道で新しい仕事を始める皆さん、皆さんならきっと、これからもいい仕事ができるでしょう。
 近年の私は、皆さんの作品に対して批評家めいた口をきいたりする、あまりいいファンではありませんでしたが、今、心をこめて皆さんを応援しています。がんばれ!きゃらばん!

劇団いぶき

劇団いぶきは、鹿児島県知覧町で40年以上活動している劇団です。