シノプシス
茶業農家の草田寛三、冴子夫婦には二人の子どもがいる。息子の三郎は、東京で保険会社に勤めている。娘の真美は二十一歳。真美が十六の頃、寛三が浮気をしていることを知って以来寛三とまともに口をきていない。
その真美が、今夜彼氏を連れてくるという。実は結婚の許しを得るために彼氏が来る予定であった。折しも息子の三郎も突然帰郷、しかも東京から女を連れて来た。女、レナは東京の乾物やの娘。実は三郎は保険会社を辞めてレナと乾物屋を日本茶専門店にして新しい事業を興そうとしていた。レナは最近、ネット上で知り合った鹿児島のメール友達から日本茶のことを聞いてそういう商売をやってみようと思ったのだ。そのメル友とは実は、寛三だった。寛三は最近パソコン教室に通いパソコンに目覚め、年齢を偽ってレナとネット上でつき合っていたのだ。寛三の電脳浮気を知っているのは寛三の高校時代からの後輩で茶業仲間の隆二だった。隆二は今年四十路を迎える独身男。そして真美とつき合っていたのはなんと隆二だったのだ。真美は、幼い頃から父親としっくりいかず、隆二にいろいろなことを相談する間柄だった。怒りまくる寛三、たまらず寛三の電脳浮気を暴露する隆二、逆上する冴子。唖然とする三郎とレナ。
そんな時、霜注意報が発令されるなか、寛三が自分で整備をした防霜ファンが逆回転しているとの連絡が入った。寛三と隆二は慌てて畑に走るが間もなく寛三が風に煽られてファンにからまったクレモナを取ろうとして落下、大けがをする。そしてファンは逆回転したままで、草田家の一番茶は全滅となった。寛三は虫の息で、真美にこれまで父親として至らなかったことを詫びる。また、レナは三郎にせっかく日本茶の商売をするのなら、知覧でもっと深く茶の勉強をしたいのでしばらく父親の畑や工場を手伝おうと言い出す。惨憺たる状況に少しだけ光が射し込む様を見届けた寛三は静かに息を引き取るかにみえたが、実は、ばつが悪くて意識のないふりをしていただけだった。
2002年01月18日 知覧町茶業振興大会(コミュニティセンター知覧町民会館)