劇団いぶき32年の歩み

2009年に制作した動画をYoutubeにアップしました。

 



2009年11月21日
鹿児島演劇見本市
サンエール鹿児島

1977年、劇団いぶきは知覧町に生まれた。
知覧町連合青年団の演劇部として発足した劇団いぶき。しかし、芝居なんて誰もやったことがなかった。

1980年代半ば、僕たちはこの劇団を引き継いだ。
「僕たちは、どんな芝居をやるべきなのか」
時代は、小劇場ブーム。
スピーディーで、はちゃめちゃで、かっこいい芝居をやりたかった。おしゃれであかぬけた芝居をやりたかった。インテリで難解な芝居にも憧れた。しかしそれは、所詮モノマネだったかもしれない。心から客を満足させることもできなかったし、僕たち自身も満たされてはいなかった。
僕たちは何かから抜けだすように、この芝居をつくった。

1990年「 前略…土の上から…。」
舞台は農村。主役は農業青年。等身大の僕たちの姿を、スピーディーに、はちゃめちゃに、そしてかっこよく描いた。僕たちは僕たち自身がかっこいいってことを、大袈裟に芝居にしてやった。はじめて客が褒めてくれた。笑いや拍手が本物だということを体感した。帰り際の客が「おまえらすごい劇をやるんだな」と声をかけてくれた。

そして1991年、我が劇団で伝説と語り継がれる芝居が生まれた。「 約束…」
Uターン青年が、町おこしのためにつくった会社の経営に失敗して東京に逃げた。逃げた男と結婚の約束をしていた女が東京に男の後を追ってみると、男は子持ちの女と同棲していた。
1幕1場、暗転なしの二人芝居。2人の女のバトル。セリフの応酬。男はどっちの女との未来を選ぶのか。そして男が登場する瞬間に幕が下りる。

全国青年大会で東京の舞台にこの芝居をのせた。創作脚本賞と舞台美術最優秀賞を受賞。舞台美術最優秀賞…、板の上に平台を並べてダンボール箱をばらまいた舞台に、黒ずくめのスタッフがドアや窓を持ってまわる。この芝居を審査員は舞台美術最優秀賞に選んだ。

芝居ってなんだ。なんておもしろいんだ。

その後、劇団いぶきは、青年団の演劇部ではなく、市民劇団となって、僕たちが芝居をつくり続けていくことになった。
1992年…「 ニッポン茶々々」、1994年…「 ふるさと列車騒動始末
農村を舞台にしながらも、僕たちは僕たちの新しい芝居の手法をさぐり続けた。展開の速いストーリー、オリジナルの音楽、生演奏。新しいやり方を観客が認めて、笑って、泣いて、拍手してくれたらそれが劇団いぶき流の芝居になる。

1996年「 奇跡…夢咲町商店街応援歌」はじめての自主公演で1200人の観客を動員できた。劇団いぶき流の芝居が、町の人々に認められつつあった。
郊外に進出してきた大型スーパーに押されて衰退する商店街。その商店街の酒屋の娘が大型スーパーの社員と恋に落ちた。東京の中学の女教師は不倫がばれて田舎に逃げてきた。そんな女教師に酒屋の息子が恋をする。さらに酒屋のぼけたじいさんは、町にUFOが来ると言いふらしている。小さな事件が次々と勃発し、クリスマスイブの大事件へと繋がってゆく。
満員の観客全員が揺れるように笑ったかと思うと、いっせいに水をうったように芝居に食い入り、また揺れるように笑う。芝居ってなんておもしろいんだ。

1998年「 涙小僧
親に愛されていないと信じ込んでいる娘、娘を抱きしめきれない母親。

押し入れの中の宇宙で出会った涙小僧に見守られ、ゆっくりと家族が再生されて行く物語。

2000年「 恋と神様とねぷた囃しと

父子家庭で育った娘は、遠距離恋愛していること、その相手にプロポーズされたことを父親に言いだせない。

父と娘のせつない心情を中心に据えながら、はちゃめちゃな二人の神様と町の住人たちがひきおこす抱腹絶倒のコメディー!

2001年「 平成茶摘み唄事情…お父さんに気をつけて
嘘に嘘を重ねる茶業農家のおやじに振り回される家族。公演時間40分のこの芝居は、さまざまな団体から招かれ上演を重ねる人気作品となった。

そして2003年2月、劇団いぶきの代表的作品が生まれた

ナム!」だ。

この世に未練を残し成仏できないと言う老婆の幽霊は、生きた娘の身体を乗っ取り大胆な行動に出る。めまぐるしく展開するコメディーの中で「生きる」というテーマを真面目に堀りさげた。劇団いぶき流の表現がここに確立した。これが…劇団いぶきの芝居だ。

2005年「 きつね。

劇団いぶきの芝居は、高齢者から若者にも支持される。芝居に興味のある高校生が、劇団いぶきの芝居を観て入団してくる。
こいつは当時現役女子高生。

劇団いぶきの芝居を支える音楽も充実した。コーラスが入る芝居。これも劇団いぶき流の芝居の作り方だ。挿入曲を気に入ってCDに焼いてくれとの依頼も多い。

2007年「 じいちゃんの日記帳

地域の忘れ去られようとしている歴史を掘り起こして芝居にする。いぶき流の芝居で。

自主公演の客席は、いつも満席。僕たちは地域に支えられている。地域には劇団いぶきのファンがいる。劇団いぶきは地域の観客といっしょに育ってきた。

地域とともに歩む劇団として、この二つの作品も紹介しなければならない。

2006年に初めて上演した「 やまびこきつね

小さな子供から大人まで楽しめて、しかも劇場でないところでも自力で上演できる芝居をつくった。小学校の体育館での公演依頼に応えている。 

そして2001年に初めて上演した 朗読劇「ほたるかえる」

特攻隊の芝居はやらないと考えていた僕たちが、それでも地域の劇団として表現するならこのスタイルしかないと信じてつくった。特攻隊員の手紙や遺書、手記などを音楽を交えて構成し朗読する。本物の遺書をセリフにしたのだ。私たちのやり方に多くの方々が賛同した。東京、名古屋、大阪の知覧愛郷会に招かれて、さらに2005年8月に宮崎市主催の宮崎市民平和の集いで公演した。そして今も朗読劇「ほたるかえる」の公演依頼は後をたたない。

2009年11月、今年入団した高校生たちが初めて取り組んだのも朗読劇「ほたるかえる」だ。

2007年に、僕たちは南日本新聞社主催の南日本文化賞を受賞した。どんな芝居をつくればいいかさえわからなかった僕たちが、地域の人たちといっしょに芝居をつくってきた成果を認めていただいたのだ。
そして
いよいよ2010年3月鹿児島市民文化ホールで、劇団いぶきの代表作「ナム!」が公演される!

音楽はオリジナル生演奏

劇団いぶき音楽班

劇団いぶきは、鹿児島県知覧町で40年以上活動している劇団です。